「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」報告

理工系人材育成に係る現状分析

<産業界の学びニーズに係る業種別職種別分析>[調査実施:河合塾]

 

経済産業省大学連携推進室 宮本岩男室長
(第2回「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」より)

宮本岩男室長
宮本岩男室長

理工系人材育成に係る議論を進めるにあたり、背景となるバックデータを整理いたしました。


まず、高校卒業者約105万人の中で、理系、文系選択者がどの程度いるか、いくつかの調査から推計すると、文系が49万人、理系が23万人で、2.1:1という比率になります。高校卒業者の約半分が大学に進学し、56万人くらいが学士として卒業しますが、その中の文系が約35万人、理系がその半分くらいで、比率は2.0:1となります。高校のときの文系・理系の比率をほぼ維持したような形で、大学の理系・文系がいるということになります。修士になると、文系の多くが修士に進みませんので、理系のほうが多くなります。

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大学で理系に進んだ人が、その後どのような進路に進んだのか調べました。学校基本調査のデータによると、理学部・工学部を出た人の75%~80%が、理工系の仕事に就くか、理工系の修士に進学しています。そして、理工系の修士修了者の90%~95%が理工系の仕事、もしくは理工系の博士に進学しており、高等教育の段階が進むにつれ、学んできた専門性を生かした進路に進む割合が高くなっていると言えます。

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さらに、博士修了者については、文部科学省の調査によると、36%くらいが大学等研究機関のポストに就き、民間企業就職者は25%、ポスドクが22%ということです。アメリカと比べると、民間企業に就職する人の割合が低い点に、特徴があると言えます。


ポスドク期限終了後は、78%が別のポストのポスドクに就いており、13%~14%の人が定職に就いているという状況です。

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下記のデータは、修士修了者の就職先を職業別に見たものです。棒グラフの赤い部分が文系、青が理系、緑の折れ線は理系の割合となります。左から、研究者、製造技術者(開発)、製造技術者(開発を除く)、建築・土木技術者、情報処理技術者、その他技術者と、ここまでが技術者の内訳であり、それぞれが9割以上を占めています。

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一方、学士については(下図)、同じ職種で見ますと、技術者の中では理系の方の占める比率が高いのですが、情報処理・通信技術者だけは約50%が文系で占められています。

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産業界が求める理工系人材ニーズに関する調査報告

第1回円卓会議でも少し紹介いたしましたが、産業界で技術者として働く人約1万人のアンケート調査について、さらに細かく分析した結果を紹介いたします(2015年1月下旬から2月上旬にかけてアンケート実施、調査実施:河合塾)。

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下図は前回も紹介いたしましたが、企業における現在の業務で必要な専門分野についての約1万人の回答結果です。機械分野やITの分野に、産業人材の学びのニーズ、技術者の学びのニーズが高く表れていることがわかります。この後は詳細を見ていきます。

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下図は、この1万人の業種と職種の関係を整理したものです。業種は、縦に、機械系業種、電気系、材料系、化学系、情報系、建設系とならび、そのそれぞれ職種として、「基礎・応用研究、先行開発」を担当する職種の人、「設計・開発」職種の人等の内訳が示されています。その比率を見ると、機械系業種、電気系業種、建設系業種において、職種として一番人数が多いのが、「設計・開発」職だということがわかります。


一方で、化学系業種においては、「基礎・応用研究、先行開発」職種が一番多く、情報系業種では、どの職種よりも「システムエンジニア」職種が圧倒的に多いというような、業種によって異なる個性、傾向があります。

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業種・職種と学びの関係を見ていきます。


例えば、下図の電気系の業種では「設計・開発」職種人材が一番多く、他に「システムエンジニア」、「生産管理・品質管理」職種の数が多くなっています。

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そして、それぞれの職種の方がどのような分野に対する学びのニーズを強く持っているかを、アンケートの結果としてプロットしたものが下図2点になります。どの職種でも電気系の知識、機械系の知識、及び情報系の基礎的な内容に関して学びニーズがあるという結果が出ています。

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もう一つ別の業種を紹介します。情報系の業種においては、すべての職種の中で、「システムエンジニア」職種が圧倒的に多く、その中の出身学科を見てみますと、文科系出身者が3分の1くらいを占めています。先ほどの学校基本調査のデータと同様、情報産業では文系の人が相当いるということが見受けられます。

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情報系業種の中で、それぞれの職種の方にどういった学びニーズがあるか見ていきます。基本的には、情報の分野に関する学びニーズがありますが、その情報分野を詳しく見ていくと、基本ソフト、ソフトウェア基礎、データベース・検索、情報ネットワークなどにいろいろな職種の学びニーズが高く出ていることはわかります。

一方で、その少し右のほうに、「人工知能・機械学習・知識処理」分野があり、一つの職種だけに非常に高いニーズが出ています(青い折れ線)。それは、「基礎・応用研究、先行開発」職種、要するに研究職であり、全体の1%くらいの人数規模ですが、この職種では、「人工知能・機械学習・知識処理」分野に高いニーズがあるということです。


コンテンツ制作・編集(クリエイティブ系)の職種は(オレンジ色の折れ線)、ゲームなどを作る仕事だと思いますが、全体の5%くらいの人数規模ですが、まったく違う学びのニーズを持っているようです。職種、業種によって、学びのニーズが違うということがわかります。

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次に、職種から、業種ごとにどのような学びのニーズの違いがあるか見ていきます。例えば、「基礎・応用研究、先行開発」職種の人について、その人たちの業種間で比較しました。それぞれの業種に対応した専門知識分野というのは違いますので、当然、業種によって学びのニーズが異なるということがデータとして出ています。

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下図は、「システムエンジニア」職について、業種毎の学びのニーズを見てみると、これは産業分野が変わろうと、学びのニーズがほとんど変わらないということが見て取れます。

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最後に、経済産業省の産業構造審議会情報分科会で、ITに関してなされている議論についてお話しいたします。下図は、企業内のITに関する予算や、IT部門が注力する業務などを、日本とアメリカで比較した資料です。ここからわかるのは、日本のIT分野に関しては守りのIT投資が非常に多いのに比べて、アメリカのほうは攻めのIT投資が多いということです。日本はこれでいいのかといった議論もなされています。

このデータを見て2点、気になったことを述べます。1点目、まずは、産業界の学びのニーズを明らかにするにあたっては、現状生まれるニーズのみならず、将来の産業ニーズも勘案したうえでのニーズを示す必要があるという気がいたしました。2点目は、産業界の学びニーズへの対応方策を検討するにあたっては、具体的な学びニーズを明らかにすると同時に、その人材の人数規模やニーズも合わせて見ていく必要があり、その上でどのような対応・方策をとるべきか議論できるのではないかと感じた次第です。

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<関連記事>

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 <産業界の学びニーズに係る業種別職種別分析>
  経済産業省大学連携推進室 宮本岩男室長
 (第1回「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」(平成27年5月22日)より)


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